「亜由!」



学校へと続く道の大通りに入る手前でなんとか亜由に追いつく。


振り返った亜由は悲しそうな、怒ってるようななんとも言えない顔をしていた。


そんな顔をさせて、胸が痛くなった。



「冬……」



これ以上悲しそうな顔の亜由は見たく無いとは思ったけど、さっき酷いこと言ってるし。


お試しで付き合うなんて、亜由が本気なら尚更悪い。


「オレさ、考えたんだけど、亜由のこと、女って意識して無かったんだよね」


「はぁ!?」


「幼なじみだから、恋愛対象じゃないと思ってたんだ。

でも、これからは視点変えてみるよ。

待てる?」


「何その上から目線」


 待てる? が悪かったな。


なんて言い換えようかと考えていると、亜由が顔をあげてオレを見る。



「…………ずっとアンタのこと好きだった、あたしのことナメないでよ」



泣きそうで、唇を噛みしめてる亜由はなんだか無性に可愛くみえた。



「それに、冬があたしのこと女だと思って無いことくらい知ってたよ。

だけど!

絶対振り向かせるんだからっ

覚悟しなさいっ!」



捨て台詞のように吐くと走って前を行く亜由。


自分が先に前に行った癖に


「ほら、冬早くっ!」



ってオレを手招きして、また前に向く。


なんだそりゃ。


でも、その姿は幼なじみの亜由の後ろ姿には見えなかった。