「まあ、つまりだ。かなり遠回しな言い方だが…俺はお前のことが、どうも…好きみたいだ」


信じられなかった。嘘だと思った。自分の都合のいいように、勝手に脳内変換してしまったかと疑った。

だけど課長の顔を見ると、そんな思いは消えていく。
顔を少しだけ赤くして、照れたように目を泳がせるその顔に。


「あー、悪い、やっぱり困るな。っておい、どうした?」


いつの間にか私の頬には涙が伝っていたらしい。
途端に慌てだす課長を、とても愛しいと思った。


「…私、課長のことが好きだって、言ってもいいんですか…?」


そう言うと、焦った顔が驚いたものに変わって目が見開かれたかと思ったら、次の瞬間ぎゅっと眉間にしわを寄せた。

それを見たと同時に、腕をぐっと引かれた。


「……取り消しはなしだからな」

「そんなことしません」

「そうしてくれ。……もう、俺の気持ちは取り消せないから」


好きだよ。



恋愛出来ない2人が、同じように想いあって一緒にいたいと願うようになる。

こんな奇跡はきっと、今世紀最大なんじゃないかな。


温かい腕の中で、そんなことを思った。