「…え?なんで」
「なんかさ、越智がそんな言い方すんの珍しいなと思って」
由紀がそう尋ねた。
確かに、いつもの越智だったら優秀で厳しい人への憧れを抱きそうなのに引っかかる言い方だと私も思った。
「あー、いや…」
「なによ」
「まいっか。2人だから言うけどさ、実は俺水瀬課長と昔からの知り合い…なんだよ」
越智はそう言ってビールをぐいっと煽った。私は由紀と顔を見合わせて目を丸くした。
「まじで?」
「嘘つくかよ。あの人、俺の兄貴の高校からの友達。家に来たことあるし俺も勉強教えてもらったりでよく面倒見てもらってた。去年、兄貴の結婚式のときに会ってそれっきりだったけど…まさか同じ会社だなんて全然知らなかった」
すごい偶然もあるものだ。
それなりの有名大学出身の越智が勉強を教えてもらっていたということは、水瀬課長は昔から優秀だったのだろう。
すると由紀がずいっと身を乗り出して難しい顔をした。
「アンタそれ、他の社員に言わないほうがいいわよ」
「俺だって仕事とプライベートはきっちり分けたいし言うつもりないけど…なんで?」
「群がられるよ絶対」
「ああ」
由紀の言葉の意味を理解して相槌をうつ。越智は訳がわからないといった顔をして、尋ねてきた。
「え?なに、総務課でのあの人ってどんな感じなの」

