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挨拶回りも終わり、南校舎の4階から私たちは教室へ戻ろうとしていた。

「このあと3人でいつものファミレス行かない?」

葉月の提案に美姫と私も同意する。

「行こー!卒業記念に、3人であそこのビックパフェ挑戦しない?」

「いいなそれ!私も食べてみたかったんだよな~」

2階に差し掛かったとき、私はふと足をとめる。

数学科準備室。

ここにくると私はふと記憶がよみがえる。

先生……。
いまどこにいるのかな。

いつ、帰ってくる?
私ずっと待ってるんだよ……

ずっと待ってるっていったけれど、帰ってこないんじゃないかと不安になる。

先生……私、待っててもいいんだよね?

「みなみー?置いてくよー!」

階段の下から、美姫の叫ぶ声が聞こえる。

「いまいくよ!」

私は美姫と葉月のもとへ向かった。






「絶対完食してやろうぜ!完食できなかったら一人1500円だよ?大出費だし!」

美姫と葉月は楽しそうにパフェの話をしている。
二人の後ろを歩きながら、私はどうしても話に入っていく気になれなかった。

もうすぐ校門を出てしまう。
もう一度数学科準備室に行きたい……

「二人とも!ごめん私……」

顔をあげると、二人は立ち止まって校門のほうを見ていた。

「みなみ」

二人はこちらを向いて笑っている。

「?…な、なに?」

二人は左右に別れて離れはじめる。
開けた視界に入ってきたのはーー

「うそ……」

校門の前に立つその姿を見ただけで、私は涙が溢れてきた。
その姿は、こちらに気づき手を振っている。

「楠木!……いや、"みなみ"」

嘘だ。
これは現実?

本当に、本物なんだよね?

「先生っ……!待ってたよ……」

私は先生のもとへ一目散に走っていった。