「美姫、みなみ」

窓際で話している二人に私は声をかける。

「お世話になった先生達、一人ずつまわろうぜ」

「うん」

二人は口を揃えて言った。


廊下は卒業生で埋め尽くされている。

写真を撮っている人、泣きじゃくっている人、友達と笑いあっている人など様々だった。

「あっという間だったな、高校生活」

私は過ごすのが最後となる教室を、目に焼き付けるように一つずつ丁寧に見ていく。

「本当にね。色々あったね」

みなみは私の後ろを歩きながら答えた。

「4月から大学生だよ?想像できないよね?」

そう言って美姫が笑う。
それにつられて私も笑った。

「あ」

前から歩いてくる二人も、私に気づく。

「葉月!」

瑞穂は私に笑顔で駆け寄ってくる。

「相変わらずラブラブだね~」

私が意地悪な口調でそういうと、瑞穂は顔を真っ赤に染めた。

「梶原!"瑞穂"のこといじめるなよ」

「いじめてないし、からかっただけだよ!」

私は中森のほうを向いて、にやにやと笑った。

「大学離れるからって、浮気したらだめだよ~中森!」

「するわけないだろばーか!」

「じゃあ私、先生に挨拶回りしてくるのでこれで」

「またな梶原」

「葉月、また遊ぼうね!連絡するから~!」

私は二人に手を振ったあと、背を向けた。

「成長したね~葉月」

美姫がからかい口調でそういった。

「もう吹っ切れてるし、いいの!」

私はそう言い切って、美姫に笑いかけた。
美姫もわたしに笑い返してくれた。