失恋シンデレラ

「お前こそ、なんで部室から出てきたんだよ」

「私はバスタオル取りに来ただけ」

バスタオルと聞いて中森は目を輝かせた。

「ちょっとバスタオル貸してくれよ。びしょ濡れなんだよ、見たらわかるだろ?」

中森の身体から滴り落ちる雨の雫は、雨の強さを物語っていた。
濡れて透けた白いシャツからは、下に着たタンクトップが透けて見えてドキッとする。

「こ、これこの前の練習で忘れて帰ったやつだから、洗濯してないしっ」

「はあ?まじかよちゃんと持って帰れよな。ほんと梶原は女子力ってもんがないよな」

「…ごめん」

いつもなら反論して口論になるはずなのに、今日はそんな気になれない。
いつもどうやって話していたっけ。

「な、なんだよ謝るなよ気持ち悪いな」

中森は反論しない私を見て戸惑っている。

「傘、あるか見てくる。バスタオル用意して待ってろよ」

そう言って中森は、荷物を私の足元に置いて部室のほうへ走っていく。

「え…あ、ちょっと中森!」

洗濯してないって言ったじゃん。

女子力がないのは前からわかっていた。
何度も中森に言われているのに、今言われたときはとても心が痛んだ。

やっぱり私は女らしくないんだ。
せめてもの救いは、髪を伸ばしていることだった。

女らしくないのに、髪を伸ばしていたってしょうがないのに…。