真夏の太陽の日差しが降り注ぐなか、私はきらめく水面を切るように泳いで進む。

「梶原(かじはら)!27秒11!」

プールサイドに着き顔を上げると、誰もついていないようだった。
私が一番だったようだ。

「葉月、またタイムはやくなった?」

左隣のレーンで泳いでいた瑞穂(みずほ)が、水面から顔をあげるなり私に言う。

「へっへーん、この前計ったときより0.2秒あがったよーん」

私は瑞穂にVサインをして笑う。

「やっぱり葉月には敵わないな~」

そう呟いて瑞穂は、悔しそうな顔をしてオレンジ色のゴーグルを外した。

瑞穂は私の水泳部の同期だ。

見た目は可愛い系。
私服はおしゃれで、あまりスポーツをする感じには見えない。

瑞穂を見ていると、夏休みに入る前に比べてかなり日焼けをして黒くなったなと感じる。
見た目とは対照的な日焼けは、少し似合わないような気もしていた。

私も肌が焼けてきて、水着のあとがくっきり残っている。
去年の夏休みあけ初日には、美姫に真っ黒だって突っ込まれてたっけ。