「だから、待っててくれないか」

先生は意外な言葉を言った。
しばらく私は、頭の中がぐちゃぐちゃで理解できなかった。

「…え?」

「俺を救ってくれたのは楠木だ。きっと君以上の人は俺の前には現れないと思った」

私、先生を待っててもいいの?
好きでいてもいいの?

「必ず戻ってくるから、だからここで待っていてほしい。無理なら断っても……」

「待ってるっ…」

考えるまでもなかった。
私はここで、先生を待っている。

「明日でも明後日でも、1年後でも、5年でも10年でも待ってますからっ…」

そう言うと、私は笑った。
先生は私を見て笑っていた。


きっと、また会える。
私はずっと待ってる。

私は去っていく先生の後ろ姿を、笑顔で見つめていた。