私はショッピング街をゆっくりと歩く。

夜に近づくにつれ、だんだんと雲行きが怪しくなって雨が降り始める。

もちろん傘なんて持ってきていなくて、私はそのまま歩き続ける。

そういえば天気予報で雨が降るって言ってたっけ…。

彼に入れてもらおうと思って、傘なんて持ってきていない。

雨に濡れてしまう。
でもいまはそれで良い。

雨が涙を流してくれる。
私が泣いているのを、まわりの人から隠してくれる。

何が王子様よ。
何がガラスの靴よ。

馬鹿みたい。

「どうしたの」

急に冷たい雨のシャワーから遮られる。
それと同時に後ろから声がした。

「風邪引いちゃうよ」

振り返ると、知らない男の人だった。
もしかしてナンパかな。

「僕についてきて」

そう言って私の手を引いて、男の人は歩きだした。

どこに連れていかれるのだろう。
抵抗する元気もなければ、頭も働かない。

私は男の人に手を引かれるまま、身を委ねて歩いた。