失恋シンデレラ

ーーカラン。

私が扉を開けると、扉の上の鈴が音をたてた。

「いらっしゃい」

カウンターのそばにいた男性が、私を見ると微笑んだ。
お客さんは誰もいないようだ。

「予約してないんですが…髪を切りたくて」

私は控えめに男性に尋ねる。

「良いですよ。シャンプーカットで宜しいですか」

「はい」

美姫に勧められて、はじめてきた美容室。
最近できたのか、壁や鏡が真新しい気がした。

「こちらのシャンプー台へどうぞ」

奥のシャンプー台へと案内されると、私は2台あるうちの奥側のシャンプー台へと座る。

「こちらの美容室は初めてですか?誰かのご紹介で?」

丁寧な手つきで私の首もとにタオルを巻きながら、美容師の男性は言う。

「えっと友達が、ついこの前ここの美容室で髪を切って良かったって勧められて…」

「…そうなんですか」

男性はふっと笑った。