家に帰るまでは仲のいいカップルを演じた
私達は、家に帰るなり、私はベッドの上で寝転びながら、ハルトはガラステーブルの前の座布団に腰を下ろして、それぞれのパソコンを開く。



無言のままカタカタとキーボードを打つ音
が響くその空間で



「Sonnenblume」

不意に彼がポツリと呟いた。



「今日本に来てるよね、華の宝石展」


ドイツ語で向日葵を指すそれは、近日日本
で開催されている「華の宝石展」



……世界中の花の名前を持った美しい宝石た
ちが集まる展示会のメインを飾る、287.42
カラットもの超大粒イエローダイヤモンド
である。



一昔は資本家の間をオークションによって
行ったり来たりしていたが、最近日本の大
きな財閥がこれを買取り、所持しているらしい。


「次はこれなの?」

私がそう聞くと


「ああ、3日後だ」


パソコンに目を伏せたまま答えた彼は、何
やら気難しそうな表情をしている。


「何かあった?」

尋ねながら、下調べをしようとキーボード
を叩く。


数秒の空白をはさんで彼が答えた。



「今回の警備は……奴だ」






それだけで通じるソイツの顔を思い浮かべながら


「面白くなりそうじゃん」


そう言って私はため息をこぼした。