前方から警備員が走ってくるが、目が慣れていないソイツには、私の姿は見えていない。

時折壁にぶつかるソイツを見ながら走っていると……ハルトから無線だ。


「おい、そっちはどうなってる。
俺の方はモニタールームを乗っ取った。」

「アンタのおかげで助かったよ。今から盗るから……あと2分したら照明付けて。」


了解。


そうハルトの返事を聞くころには、展示室に着いた。暗視ゴーグルを赤外線センサーモードに切り替える。


「うわぁ」

思わず声を漏らすほど張り巡らされた赤外線。

展示ケースが指紋認証と暗証番号式なのは調査済み。


するすると赤外線センサーの合間を縫い、あっという間に展示ケースに手を掛ける。

席が隣であるショウの指紋採取は容易い話であるし、暗証番号をやり取りしていたハルトのeメールには、きっちりウイルスを仕込んでいたので、指紋認証と暗証番号認証は楽々クリア。


そして、技量が問われる重量センサー回避だが、コレばかりは異常な回数親に仕込まれている。失敗するはずが無い。


手早く本物の宝石と偽物をすり替えて、本物を懐に仕舞い込み、セキュリティを再びかけて、カードを展示ケースの上に置く。


そして赤外線を避けながら再び部屋の外へ出て、窓から脱出したのだった。