この廊下の防犯カメラは全部で6つ。

勿論事前にチェック済みである。


帽子を深くかぶり直し、防犯カメラに映らないようなルートを頭の中で組み立てる。


足音を立てず且つ、迅速に走っていると……

「間抜けだな、デルタ。警備員の数が少ないと油断してノコノコやって来るとは。」


油断してねーよ、むしろ警戒したわ



そう思いながら立ち止まる。前を見ると……見慣れた顔。


皇 翔央 (スメラギ ショウ)


……話題の高校生探偵であり、私の教室の席のお隣さんである。


スラッと高い身長に大人びた顔立ち。少し茶色掛かった短めの髪はきちんと整えてあり、俗に言うイケメンである。そして学校では本当にモテる男。私自身も普段は少し、カッコいいと思ってしまっていたり。



……ただ敵に回している今、そんな感情を抱いている場合では無い。


敵に回すとコイツは単純に面倒くさい。


爽やかなその笑顔も、私からしてみれば、敵のどす黒い微笑みにしか見えない。相当きれる頭の持ち主で作戦も周到。



もう一度言おう。超がつくほど面倒。

後ろに逃げようにも体格の良い警備員2人が待ち構えていた。まず力でやり合って勝てるはずが無い。


どうしようかと考えていると


バチン

「!?」

突然美術館中の証明が落ちた

……ハルトだ

素早く暗視ゴーグルを装着し、敵の合間を縫って宝石の方へと向かった。