すぐ近くだから大丈夫だって言ったのに送っていくって聞かないから、私たちは暗くなった空の下、あの坂道を登っている。


「ていうか、こんなときにジャージでカッコ悪いよな」

「そういうところが中矢君らしいよ」

「あのさ、そろそろ中矢君ってのやめない?」

「なんで?無理だよ、だっていまさら太一とか呼べないし。むず痒くなる」

「だってさ、いずれりりーだって……中矢になるわけじゃん?」

「それは……、なってから考えまーす」

「なんだよー」

「フフッ…。そういえば、髪の毛ずいぶん伸びたよね。オシャレ男子みたいだし、女の子寄ってきそう」

「なに?ヤキモチ?」

「違うよ、バカ!」



それほど長くない坂道、なるべく沢山話をしたかった私たちは、ゆっくりゆっくり足を進めた。


坂の上を見あげると、あの頃のふたりが並んで歩いてる姿が目に浮かび、私はフッと微笑んだ。



中矢君は、私の光だった。


そしてこれからは


私が彼の


光になりたい……。