ーーカランカラン


「いらっしゃい……あれ?」

山野井君……まさかいるとは思わなかった。

「岩崎、久しぶりってこの前同窓会で会ったか」

座っている私の横に立った山野井君を見上げる。

「あの、仕事は?」

「ああ、今日は休みで暇だったからちょっと店に顔出しただけなんだけど、まさか岩崎が来るとは思わなかったよ」


注文したコーヒーを運んでくれた山野井君は、そのまま私の向かいに座った。

「同窓会では全然話せなかったけど、元気だった?」

「うん。山野井君は?」

「このとおり、一応元気だよ」

中学のときと変わらず、大きな体なのに柔らかい話し方の山野井君。


「そっか……」

そう言ってコーヒーをひと口飲んだ私をジーッと見つめている。

「飲んでるの見られると、ちょっと恥ずかしいんだけど……」

「ああ、ごめん!ていうかさ、岩崎は……中学卒業後の太一のこと、気にならない?」


高校生になった中矢君……。

ずっと気になってた。全寮制の学校に行って野球はどうだったのか、夢は叶えられたのか、叶えられなかったとしても、悔いのない高校生活送ってたのか。


「こんなこと言ったら絶対アイツに怒られると思うけど、やっぱ岩崎には話しておくべきだと思うんだ。あのころ太一がどんな気持ちだったのか、卒業後のアイツがどうだったかを」


私の知らない、中矢君……。