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学校なんか行きたくない、行きたくない……。
毎朝心の中でそう唱えながら、笑顔でお母さんに手を振っていた。
一歩外に出た瞬間、急に鉛が入ったかのように重くなる運動靴。
重くなった足を少しずつゆっくり前に進めながら、卒業までの日数を数える。
歩いてる間、周りは一切見ない。それは、代わり映えのしない住宅街だからでも、桜が散ってしまったからでもなくて、誰とも目を合わせたくなかったから。
もともと私の存在なんて無いんだから、目が合うことも、ましてや話し掛けられることすらないのに、ただひたすら少し先の地面だけを見て歩いていた。
この道で最後に誰かと挨拶をしたのは、いつだったっけ?そんなのももう忘れてしまった。
どうしてこうなったかなんて、考えるだけ無駄だった。
答えなんてないから。
明るいはずの通学路が、私の目には真っ暗に映る。ただそれだけ。
イジメに意味なんてないんだから、私はただひたすら時が過ぎるのを待つ。それでいい。
それでいいのに……。
『おはよー!』
『おーい、おはよう!』
やたらと大きな声が耳障りで、私はつい……振り返ってしまった。
目が合うはずがない。声をかけられることも有り得ない。
なのに、坊主頭で真っ黒に日焼けした彼が、笑顔で真っ直ぐ私の目を見ている。
それは私にとって、青天の霹靂だった……。