「なぁ美鈴?
まだ帰らないのか?」
「……」
あの後からだいぶ時間がたって
もう辺りは暗くなりかけている
だが
美鈴は子猫とじゃれあっていて
一向に帰るそぶりをみせない
「ほら!
美鈴帰るぞ」
腕を引っ張りたたせると軽く睨まれた
この様子だと大樹を避け続けていた間も暗くなるまで子猫と遊んでいたのだろう
そして夜道を一人で……
そんなことを考えているとゾッとした
こいつは女としての自覚があるのだろうか?
でも子猫がここにいるかぎりこんなことがこれからも続くのだろう
たしか美鈴はペット禁止のマンションに住んでいたな…
「……ハァー」
大樹はため息とともに動き出した
そして片手に子猫を抱え
反対の手で美鈴の手を引き歩き出し
「猫の面倒見に来いよ」とだけ呟いた
美鈴はパッ笑顔になり
「猫じゃなくて“ビビ”」
と訂正しながら大樹の横に並び笑顔で学校を後にした
END

