その瞳をこっちに向けて



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 目の前に聳え立つのは、名高い高級ホテルのクラナスホテル。


中畑先輩に連れられてやって来たのがここなわけだが、別に中畑先輩はこのホテルの御曹子とかでもないし、来た理由が全く分からない。


「何でクラナスホテル?」

「クラナスホテルの中に入ってる店に用があんの」


へー……っと相槌を打ちながらも、キョロキョロと目を動かしホテルの隅々を見る。


 大きなシャンデリアがロビーをキラキラと照らす光景は、どこか幻想的で夢の世界に足を踏み入れた様な感覚になる。


そんな中、中畑先輩の後を着いていくと一つのレストランの前で足を止めた。


「ほら、ここ」


軽く中畑先輩がそう言って店を指差すけど、この店の外観をこの間鈴菜の持ってきた雑誌で目にした所だ。


「ここって!最近話題になってたケーキバイキングしてる店しゃないですか!」

「そっ。予約してあるから」

「マジですかっ!めちゃくちゃ嬉しいんてすけど!」

「だろ」


フフンと鼻を鳴らす中畑先輩はさておき、予約がなかなか取れないって言われていたこの店のケーキバイキングに来れるなんて本当にラッキーとしか言いようがない。


まさか中畑先輩が予約していたとは。