その瞳をこっちに向けて



「そ、それは、……私への脅しですよね?」

「さあ?」


脅しだとはハッキリ言わない癖に、中畑先輩の目は語る。これは、脅しだと。



ほんと、……ムカつく!



ムカつく。けど、

「つ、付き合わせて頂きます」

引き釣っているだろう笑みを中畑先輩に向け、そう答えるのが私に残された道なのだ。


 私の答えに満足そうにニカッと笑う中畑先輩。そして、そのまま玄関のドアへと手を掛ける。


「じゃあ、行くぞ!」

「はやっ!!いやいやいや、全然準備出来てないし!!」

「準備?そのままでいいと思うけど?」


何か問題でも?と言わんばかりにこてんと首を傾げてくるが、もの凄く失礼な事を言ってるって分かってるんだろうか。


いや、頭のいい中畑先輩だから分かってる筈。って事は、わざと…ですか。


どれだけ私の事が嫌いなんだ、この人。



「どんな格好しても私は綺麗にならないとでも言いたいんですかっ!そんな事言われなくても知ってますよ!知ってますけど、少し位ましにしたいっていう乙女心が分からないんですかっ!このあほがっ!!」


フンッと鼻息を荒くしてそう捲し立てると、中畑先輩はぽかんとした表情をして「あほって……」と呟いていて。



もしかして、本気で分かってなかった?



今更そう思ってももう引き返す事なんて出来るわけもなく、そのまま身仕度を済ます為に自分の部屋へと早足で向かった。