その瞳をこっちに向けて



「鈴菜、どうしたの?」


そう言って、玄関へ顔をひょこっと出した所で目を見開いた。


 そんな動揺した私を馬鹿にしたようにクックッと喉を鳴らして笑う目の前の人物。そして、軽く右手を挙げて「よっ!」と口にする。



何がなんだか分からない。

けど、今出来る事は一つだけ。



「なっ!何で中畑先輩か居るんですかっ!」


こうやって叫んで頬を膨らませるだけだ。


「俺、行きたい所があるから付き合わせてやろうと思って」

「何で上から目線!んでもって、付き合わせていらないですよ!」



いきなり人の家に来て何を言い出すかと思えば。

ありえない!

何言っちゃってんだ、この人!



 苛立ちから握り拳をつくった手が僅かに震える。が、中畑先輩はそんな私の様子なんてお構いなしだ。


「はぁ……、仕方ないか。ストーカーしてたって親に言わなきゃだな。犯罪だしな」


わざとらしく吐き出されたため息に続くのは独り言の様な脅し。