その瞳をこっちに向けて



「あれ?工藤さん?」


何でこんな所に居るの?と言わんばかりに不思議そうな顔をされて、思わず笑顔を張り付ける。


「さっきぶつかっちゃって、仁の知り合い?」

「いや、知り合いってほどでもないけど。祐の彼女」

「たっ、祐の彼女!!」


仁先輩に私の事を訊いた彼女が、仁先輩の恐ろしい勘違いに目を丸くして驚いているが、私はそれどころじゃないわけで。


勘違いを訂正するなんて事よりも、気になって仕方がない事を口走っていた。


「お二人はその……」

「さっき言ってた誕生石の彼なんだ」


頬に手を添えて照れているのを隠しながら、そう言ってのける彼女の言葉を聞いて、頭に隕石が落ちたような衝撃がやってくる。


それでもへらっと笑って、

「そ、そうでしたか」

と言うと、取り繕う様に手を叩く。


「いやー、お似合いだな!うん。凄くお似合いです!!じゃあ、私、用事あるので!」


バカみたいに無駄にハイテンションでそう言い切ると、彼等に背を向け来た道を戻るように駆け出した。



仁先輩を一目でいいから見たいと思ってここまで来た。

けど、……やっぱり来なきゃ良かった。