その瞳をこっちに向けて



言われてみて、ハッとした。


そこまで考えた事がなかった。というか、好きな人の好きな人を考えるなんて思いもしなかった。


自分の好きって気持ちがいっぱいいっぱいで、自分に見える仁先輩しか見ようとしてなかった。



仁先輩はいつも何を考えてるんだろう。本を読んでいる時は本の事。中畑先輩の話してる時は中畑先輩の事。他の時は、……何を考えてるんだろう?


仁先輩の好きな人って……、




誰なんだろう?




 ふと部屋の窓の外を見れば、隣の家の白い壁が夕日で赤く染まっている。まだ暗くなるには時間がある。



仁先輩を、……見たい。



そう思うと直ぐに自分の部屋から飛び出した。運動靴に足を突っ込み玄関から出ると、駆け出す。


速くもない走りだけど、私にとっては全速力だ。


 勢いよく移り変わる景色。向かう先は一度行った仁先輩の住んでるマンションの前。


マンションの前まで着くと、荒い息を落ち着かせながら近くにあった電信柱へと身を隠す。