ダムが決壊したかの様に頬を伝って流れ続けるその涙を、再び中畑先輩の指が優しく掬う。
「汗、……多すぎ」
「違い…ます。……これは」
汗だと誤魔化すのは悲しさから溢れたものだけ。今の私は、信じられないくらい幸せで。嬉しくて。
この涙をいつものように汗だと誤魔化してしまうのは、余りにも勿体ない。だから。
「これは、……嬉し涙です」
涙を流しながらもニカッと歯を見せると、中畑先輩がフッと笑った。
そして、
「バーカ」
そう言いながら中畑先輩の右手が私の頭をグイッと自分の方へと引き寄せた。
ポスンと中畑先輩の胸に顔が埋まる。温かい体温と尋常じゃないくらい速い心臓の音が伝わってくる。
「可愛い過ぎだから。それ」
上から降ってきた声は余りにも甘くて、思わずギュッと中畑先輩のブレザーの胸元を握り締めると目を閉じる。と同時に、中畑先輩の腕が背中に回った。
「もう、離してやんないから」
抱き締める力が僅かに強くなると共にポツリと呟かれたその言葉に、ゆっくりと目を開き顔を上へと向ける。
中畑先輩の瞳に私が映る。その事に自然と口角が上がった。



