不安がじわじわと侵食するかの様に冷たくなっていく指先。だがその指先が突如として温もりに包まれた。
「はい、これ」
「えっ?」
鈴菜がそっと私の手を取って、その上に乗せた物に目を奪われる。
今までに何度か目にした事はあるが、買った事はなかったそれ。掌の真ん中にちょこんと居座るピンク色。
「恋愛成就のお守り!私からのプレゼントよ。有り難く受け取っておきなさい」
ぽんっと私の肩を叩きながらそう言う鈴菜は、どこか照れくさそうに少し視線を逸らす。
そんな凄く友達思いの彼女を目の前にして、嬉しさから視界が霞む。
「す、…鈴菜」
半泣き状態で彼女の名前を呼ぶのが精一杯な私の頭をぽんっと軽く叩くと、ニカッと笑う鈴菜。
「麻希なら出来るわよ」
絶対に大丈夫。そう後押ししてくれる言葉。
ああ、もう。
私、……本当に鈴菜と友達で良かった。
ガタンッと大きな音をたてて立ち上がると、鞄を手に取って鈴菜へと顔を向ける。
「ありがとう。私、……行ってくる」
そう言ってギュッと歯を食い縛った私に、鈴菜が優しく微笑む。
「うん。行ってらっしゃい」
その言葉を背に、中畑先輩のクラスへ向かって足を踏み出した。



