「さあ、麻希……」
そこで鈴菜の言葉が止まったと思ったら、不思議そうに首を傾げた。
「何してんの?」
当然ながら、中畑先輩から見えない様に机に身を隠した私に向けられたものなのだが。
残念ながら今の私は、中畑先輩に会いたいのに会いたくない。
「あー、私は帰ったと伝えて下さい」
「何言ってんのよ。私が考えた作戦をどぶに捨てる様な事は許さないわよ」
「で、でも……」
やたらと速く脈打つ心臓の辺りの服をギュッと握り締めるが、鈴菜はそんな私の事などもう見ていない。
鈴菜が見ているのは中畑先輩の方だ。
そして、鈴菜が私を立ち上がらせる為に私の腕を上へと引っ張るのと同時に声を張り上げた。
「あっ、中畑先輩!こんな所に居ました!」
立ち上がった私の目に映るのは、開いたドアに凭れ掛かっている中畑先輩で。その中畑先輩と、バチッと音が出るんじゃないかと思う程ぶつかった視線。
それに慌てて顔を逸らす。



