「そりゃあ、誰だって幸せになれる恋がしたいでしょ」
「でしょ」
「でも、幸せになれるからこの人の事を好きになろうって思うもんでもないし。この人とじゃ幸せになれないから好きなのやめようってのも簡単に出来るもんでもないし。好きになった気持ちはどうしようもないもんじゃない」
「だ、…よね」
全くもってごもっともな意見。
それに再びため息を吐いた所で、私に向かって鈴菜が持っていた箸をビシッと突き付けた。
「だからさ。悩んでる暇があるなら、『好き』を大事にしながらぶつけてこい」
「ええっ!!ぶつけるの!?いきなり!?」
まさかの発言に目を丸くするが、鈴菜は至って真面目な顔で更に「うん。ぶつけてこい!」と箸を手にしている親指をグッと立てる。
さあ、行けっ!
行ける!!
っていう意味なんだと思う。けど……
「無理!無理!無理!無理!絶対無理!」
思い切り首を横に振った。が、眉尻が上がった鈴菜の顔が目の前にグイッと近付けられた。



