「中畑先輩、勝負しましょうよ!」
「勝負?」
「線香花火が先に消えた方が負けです。で、勝った方のお願いを負けた方がきくんです!」
「ふーん。願い事がぶっとんでなくて、出来る範囲でならいいけど」
「なら、決定って事で!」
最後の2本の線香花火。
それに少しの願いを乗せて。
「いざ、勝負!」
「負けねぇけどな」
そう言いながら、二人で蝋燭の火の中に線香花火の先を差し込んだ。
ゆらゆらと揺れる火と共に花火の先が赤くなった所でゆっくりと火から出すと、その場にしゃがみ込む。
徐々に大きくなる赤い玉。そこからパチッ…という音が聞こえてきたのと同時に光が弾け始めた。
それを合図に、息を潜めて花火を持っている右手が少しでも震えないように左手を添える。
パチパチと響く音以外に音はなく、中畑先輩も本気でやっているのだろう。
負けたからって中畑先輩が大変なお願いをしてくるとは思えない。だから、負けたって別に問題はないわけだが。
それでもやっぱり勝ちたいと思ってしまうのは、少しの願いを叶えたいから。
勝ったら。……中畑先輩にお願い、……きいてほしい。



