「ちょっ、ちょっとまって下さい!」
慌ててそう叫ぶと、手を引くのは止めてくれたものの中畑先輩の手が離されることはない。多分、逃がさんぞってことなんだろう。
その事に、はぁ…と諦めのため息を吐くと、渋々近くにあった黒のサンダルへと足を突っ込んだ。
外に出ると、家の前に止めてある自転車が目に入る。
「何しに行くんですか?」
私の手を引いて自転車へ向かって歩いている中畑先輩にそう問い掛ければ、歩は止めることなく顔だけを後ろに向けてくる。そして、スッと空いていた手の人差し指を自分の口に当てた。
「内緒」
仕草だけでも凄く色気が駄々漏れ状態なのに、片方の口角を少し上げて低い声で呟く様に告げられたその言葉に、ドクンッと心臓が跳ね上がる。
それと共にカァっと熱くなった顔を隠す為に下を向くと、今度は私が中畑先輩に聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「その内緒、……狡いです」
悔しいくらいバクバクと大きな音をたてる心臓。
中畑先輩がイケメン過ぎるせいだと言い聞かせても、それが一切治まることはなくて。
これじゃあ、まるで……ーー
そう思った所で慌ててぶんぶんと首を横に振る。



