その瞳をこっちに向けて



「なわけないか。あんなイケメン、麻希には無理よね」

「イケメン?…………イケメン!!」


 バンッと頭の中を過ったのは、間違いなくイケメンだろうあの人の顔で。またか!という思いと同時に慌てて階段を駆け下りていく。


玄関に顔を出せば、そこに居るのはやっぱりあの人で。


「よっ!」

「よっ!じゃないですよっ!何で中畑先輩はいつも突然やって来るですかっ!?」


 軽過ぎる挨拶に私の怒声が響くが、中畑先輩はやっぱり気にする事もなくへらっと笑ったまま。


そしてニッと笑うと、

「今から行きたい所があってさ。また付き合わせてやろうと思って」

そう口にする。


「またえらい上から目線ですね。まっ、でも。ケーキなら付き合ってあげてもいいですよ」

「ケーキじゃねぇけど、もっと楽しい事」

「もっと楽しい事?」


首を傾げていると、中畑先輩に右手を掴まれる。そして、「ほら、行くぞ!」とグイッと手を強引に引かれた。