「あのさ。さっきから後つけてたみたいだけど、何?」
「あの……、それは……、帰り道が偶然…」
「同じじゃないよな」
慌てて繕う嘘は、最後まで言わせてももらえない。
中畑先輩の目は更に鋭さを増し、もう私は身を縮こます事位しか出来ない。
「いえ、……その」
一応もごもごも口は動かすけど、良い言い訳も思いつかず。
「何か理由でもあんの?」
そう問いつめられたら、口を真一文字に閉じるだけ。
それでも中畑先輩は逃がしてくれないのか、じっと私から目を逸らさない。
きっと中畑先輩は、私が何で後をつけていたのかという理由を言うまで逸らしくれない気がする。
そう悟ると、固く閉じていて口をゆっくりと開いた。
「それは、…………見ていたくて」
「仁を?」
何を?ではなく、直ぐに仁先輩の名前を出す中畑先輩は、私が帰路を歩いている仁先輩をじっと見つめていた事にずっと気付いていたんだろう。
だからこそ仁先輩と別れた瞬間、迷いもせずに私の方へやって来たんだ。



