その瞳をこっちに向けて



 いつも貶す言葉しか吐かない私から出た言葉が少し恥ずかしかったのか、「そ、……そっか」と言う中畑先輩の耳は真っ赤に染まっていて。夕日に綺麗に溶け込んでしまいそうだ。


そんな中畑先輩の姿にクスッと笑い声を漏らすと、中畑先輩が怪訝そうな顔を向ける。


「何でもないですよー」


そう言って適当に誤魔化し前へと顔を向けると共に、目に映る夕焼けの空にうっすらと見える月。


「夏、……終わっちゃったな」


 ボソッと呟いただけのその言葉に、中畑先輩の声が続いた。


「もう少しだけ続くだろ」

「暑さの話じゃないですからね」

「知ってるよ」

「はぁ?」


 もう9月。夏は終わってしまったのに、何を中畑先輩か言っているのかまたしても分からず、今日何回目かの首を傾げた。