その瞳をこっちに向けて



「そういえば俺もお前を送った日に花火見ただけだなぁ」

「あんなにあった夏休みに何してたんですか?」

「それ、お前に言われたくないんだけど」

「私は非リア充爆進中なんで」

「俺だって非リア充爆進中だっての」


 少し剥きになって中畑先輩がそう言うが、それに冷めた目を向ける。


「その嘘、くそムカつきます」

「嘘じゃねーよ!」

「王子様が何を言う!ですよ」

「俺、別に王子様じゃねぇーし」


子供の様にそう言って、ぷうっと頬を膨らませる中畑先輩は確かに王子様には見えない。


『ガキ』とさえ言えるくらいだ。


「まっ、そうですね。しつこいほど根に持つし、鬱陶しい行動しますもんね」

「悪意だらけの納得すんなっつーの!」

「基本、悪意だらけですからね。でも、……それと同じ位感謝してますけどね」



悪意と同じくらい感謝もある。何だかんだで、いつだって私の背中を押してくれた中畑先輩。

寧ろ、感謝の方が大きいかも。

流石に癪過ぎるから、そうハッキリとは言ってやらないけど。