その瞳をこっちに向けて



 道並みに綺麗に並ぶ木の葉が、たまに吹く風によってザワザワと音をたてる。


立ち並ぶタワーマンションの1つに歩を進めていく仁先輩のさらさらな髪も、風で靡いている。



後、もう少しだけ。



再びそんな欲に駆られて、マンションの中へと入っていく仁先輩を追い掛ける為に歩を速めたその時。


仁先輩に「じゃあ、また明日な」と言って中畑先輩が私のいる方へと踵を返した。


中畑先輩に仁先輩の後をつけていた事がバレるのを恐れて、慌てて近くの電信柱の陰に身を隠し顔を伏せた。が、そんな行動は意味を成さなかったらしい。


 目的地へ向かって、スタスタと軽快に歩を進めているだろう中畑先輩の足音。


それが私の真横で止まった。


ドッドッドッドッ…とけたたましく鳴り響く私の心臓の音は警戒信号を発しているんだと思う。


でも、こんな状況で警戒信号なんて鳴らされても逃げる事すら出来ないわけで。


恐る恐る伏せていた顔を上げると、睨み付ける様な鋭い目が私を貫いた。