その瞳をこっちに向けて



幼馴染みで親友で。毎日一緒に登下校。



ほんと、……狡い。

そして、………………羨ましい。

私だって仁先輩から笑顔を向けてもらいたい。けど、……所詮私はそんなラインに立ってない。



自分の現状の立ち位置を思い出すと、思わず大きなため息が漏れた。


だが、そんな私の方を一度も見る事なく、パタンと手に持っていた本を閉じ、それを鞄へしまう仁先輩。そして、鞄を肩に掛けると席を立つ。


中畑先輩と一緒に帰る為に図書室を出るのだろう。


その事にガックリと肩を落とす私は、本当に不純一色なんだと思う。



今日のこの時間がもう終わっちゃう。

もっと見ていたいのに。



そんな思いを抱きながら、図書室から出て行く仁先輩の後ろ姿を見つめる。