その瞳をこっちに向けて



こうやってこっそり仁先輩を見ているだけで胸がいっぱいになる。


仁先輩とお話ししたい!とか、顔を覚えて貰いたい!とか、欲を言い出せばきりがないけど、結局の所私は、真剣な彼の表情を今日も見れたって思うだけで幸せなんだ。



 そんな事を思っていると、コンコンと窓をノックする音が響いた。その音に反応して仁先輩が窓へと顔を向ける。


それに倣って私も窓へと視線を向ければ、そこにはニカッと歯を見せて笑っている男子生徒。少し茶色がかった髪は風に揺れ、くりっとした目は細められていても、その大きさを主張している。


彼こそが今朝話題に上がっていた中畑先輩だ。容姿端麗、頭脳明晰で、誰にでも優しい。完璧星人らしい。


私にとっては、羨ましくもあり憎らしくもある人なわけだけど。


 仁先輩は彼の目が合うと窓を少しだけ開け、「何?」と声を掛け、それに中畑先輩が「一緒に帰ろうぜ!」と言う。


この光景は今日に限ったものじゃない。ほぼ毎日見る光景だ。