なみだ雨




その日はそれでお開きとなった。

練が止めるのを断って成海は「もうすぐだから病院行く」と言って聞かなかった。

じゃあせめて、車で送ると言ってもバスで行くと譲らない。


翔太は自分の携帯に幸人の写真を収め、
何も言わずに家を出ていった。

きょとんとしてる航平に、はるかは言う。

「今の人刑事さんだから、人探しが得意なんだと思う」




航平の部屋から荷物を取って家にかえる。

頭痛はもう消えていた。


隣を無言で歩く練。気まずい。


「じゃあここで」

はるかは練の前に立つ。

「わたしいいなって思える人ができたんです」

練はじっとはるかを見つめる。

「赤いスポーツカーに乗ってます。乗り心地は、うん、梁島さんのほうがいいけど、でもね、速いんです。このまま、どこか、知らない土地に、わたしを誰も知らない街に行って、昔のことを忘れて、今日の夕飯何にしよう?目の前の未来を幸せに噛み締めて生きていける場所に、行けるんじゃないかって、そう思うんです」


固く口を閉ざしていた練。


「梁島さん、梁島さんにはとても感謝してるんです。何回ありがとうと言っても足らないです。何回も助けてもらったし、何回も涙を拭いてくれた。翔太さんと食べた鍋美味しかった。わたしを泥棒だと思わないで何日も家に居させてくれた。美味しいご飯をありがとう。暖かいお布団をありがとう。暖かい気持ちにさせてくれてありがとう」


「それは…」


はるかは片方の髪を耳にかけた。
その仕草までも凛々しく見える。


(それは、俺のことを忘れたいってことですか)


そう言いたくなる口を閉じた。