航平の手はもうお茶に伸びることは無かった。
微かに涙が浮かんでいる練をそっと見つめる。
「ごめん、練。ごめんね」
成海は自分のお腹に手を添えた。
トンッという反応が返ってくる。
泣かないで、そう言うように蹴ってくる。
成海の目からとうとう涙が溢れ流れた。
水がダムから決壊するように、とめどなく涙があふれる。
「蹴ってくるの。お風呂が熱いと熱いよ、寒いよって。今も、どうして泣いてるの、って。妊娠がわかってから、この子がお腹に宿ってから、ご飯とか運動とか気をつけて、どんどんお腹が大きくなって、ああ、この子は生きてる。名前はどうしよう。男の子かな、女の子かな。会いたいなあ。かわいいなあ。って思うの。わたしこの子が好きなの」
「でも、だからと言って練に嘘をついていい理由にはならない」
ピシャリと言い切る翔太。
練の拳は震えている。
「わかってる。怖かった。練に似てなかったらどうしよう。バレたらどうしようって。わたし、父親いないから、育てられるか不安で。父親がいないからっていう理由だけで苛められたりしないかなって。だから…それで…」
「ごめん」
練が口を開いた。
「ごめん、そんなに苦しんでたなんて知らなかった」
成海は、首を横にふる。
「ごめん、でも俺…」
「幸人って人に会いたい?」
練の言葉を遮って翔太が口を挟んだ。
成海は涙を拭いながら少し考えて小さく頷く。
「フルネームと写真見せて」
