ウエストポーチに入れていた小銭入れの中から5円玉を出して、神様に祈る。



『どうか翔太との挑戦がうまくいきますように。見守っていて下さい』



願いを込めて手を二回叩き、最後に深くお辞儀をした。


朝のマラソンもそうだけれど、成功するために出来る限り思いつくことは全部したかった。


もっと出来ることはないだろうか。


朝ごはんを食べながらもやもやと考えていた時、脳にエネルギーが送られたからなのか。

にこりと笑ってビールを豪快に一気に飲み干した元同僚の愛菜の顔が、頭の中にパッと浮かんだ。

最後に愛菜と飲んだ時に言っていたあの言葉。

そうだ、あの時愛菜は……



『広告会社に入ったのも、お店の宣伝の仕方とかイベントの開き方とか…色々学べたらいいかなって思ったんですよ』



そうだ。

愛菜にとってあの会社は、すべて夢を叶えるための計画の一つに過ぎなかったのだ。



それに引き換え私は……


そんなマイナスの考えが浮かんだけれど、私はぶんぶんと頭を振り、その考えを頭の中から追い出した。


そうでないにしても、私だってあの会社にいた時の知識を生かせる何かが出来るはずだ。