お父さんが部屋から出て行くまではあっという間だった。
まるで、前から私がそう言うのを待っていたんじゃないかと思うくらいだった。
お父さんの素早い動きにぽかんとしていた私を我に戻すかのように翔太の手が私の肩に触れた。
「良かったじゃん」
私の肩に手を置いた翔太の顔を見上げた。
翔太の顔は、ぽかんとしている私を目覚めさせるかのような満面の笑みで、お父さんがこうして私のために動いてくれているということの嬉しさが、徐々に心の中に広がっていった。
その嬉しさが体いっぱいに広がったタイミングで、私は「うん」と静かにうなずいた。
そんな私に、居間に座っていたお母さんが、「良かったね。ずっと、お父さんみたいに太鼓叩きたかったんだもんね」と、ぽつりと言った。
その言葉に急に小さい頃の、お父さんに憧れていた気持ちが蘇るように形となって、目から涙がぽろりと零れた。
「小学校の時の発表会。成子が太鼓叩くの、一番楽しみにしてたのお父さんなんだよ」
お母さんはそう言って、「ね?翔太君」と言って、翔太君を見つめて微笑んだ。
「そう……なの?」
翔太は、「うん」と言って頷いた。
「この太鼓復活プロジェクトを実行しようと思った時に、俺、ナルのお父さんに最初にその相談したんだ。その時、ナルが学習発表会で太鼓叩けなかったこと知ってさ。お父さんもそのことずっと気にしてたみたいで……だから、あの時俺がいなくなったことも原因だし。絶対ナルに太鼓叩いて欲しいって……そう思ってたんだ。」
翔太はそう言って、「黙っててゴメン。本当は昨日話せば良かったね」と言って頭を下げた。

