次の日、翔太から『ぱりっとした服装で大太鼓記念館に来て』と、電話がかかってきた。

ぱりっとした服装って何か聞こうとしたら、翔太は何か急いでいるようで『じゃ』と言って速攻電話を切ってしまった。



「ぱりっとした服装って……スーツかな?ていうか……こっちに持って来てないし」



私は出勤前の響子ちゃんに頼んで、ロングジャケットを貸してもらった。

とりあえず白いパンツと、襟付きの黒いシャツはあったから、それにロングジャケットを着て、家を出た。


神社の鳥居をくぐって進むと、大太鼓記念館前で翔太がいて、「こっちこっち」と私を手招いた。

翔太はスーツ姿だった。

とりあえず、翔太が言っていた「ぱりっとした服装」というのは、これで正解だったみたいでほっとした。



「じゃあ、中入ろうか」



翔太はそう言って、大太鼓記念館の扉を開けた。



「おはようございます!地域おこし協力隊の井上です!」



翔太は大太鼓記念館に入るなり、まるで高校球児みたいなはっきりとした大きな声であいさつをした。

なんだかそれを見ていたら負けていられないような気がして、私も「井上のお手伝いの山本です!」とあいさつをした。



「お手伝い?」



翔太は、それを聞いて不思議そうに尋ねてきた。



「うん。そうだよ。それ以外なんて言えばいいの?」