次の日のお昼ごろ、翔太から私のスマホへ電話がかかってきた。

内容は、夜の飲み会の打ち合わせ。



『6時頃に花竜(はなたつ)の前に来られる?』



「花竜ってどこ?」



『ほら。飲み屋街にある焼き鳥屋さん』



翔太にそんな風に言われたけれど、大学も就職してからも私の拠点は都会の方で地元の音羽町の飲み屋街なんかに行くことがなかったから、全くピンとこなかった。



「まあ、調べて行くよ。6時ね」



『うん。じゃあ、またな』



翔太との電話が切れた後、スマホのマップ検索で『花竜』の場所を調べたところ、歩いて10分くらいでつきそうだ。

自分の部屋から出て階段を下がり居間へ行くと、仁成兄ちゃんがテレビを見ながら昼食を食べていた。



「ねえ、今日花竜で飲むことになったんだけど、お値段的にどう?高い?安い?」



「食べるものにもよるけど、俺が行けば飲んで食べて二千円くらいかな」



仁成兄ちゃんはそう言ってラーメンを食べていた箸を止めて私を見上げて「送って行こうか?」と聞いてくれた。



「今スマホで調べたら歩いていけそうな距離だったから、適当に自分で行くよ」



断ったのは、翔太と飲むと知られたら、仁成兄ちゃんがいろいろ五月蠅そうだったからという理由もあるけれど……。