「うん。そうかもね。成美ちゃん自身もさ、初めてのことで色々戸惑ってるみたいだよ。今度ちょっと相談にのってあげたらいいよ」



響子さんは、食器をしまい終わると後ろで髪の毛を結わえていたゴムを取り、腰くらいまである長いストレートの髪の毛を手で整えた。



「その人社会人みたいでさ、なかなか会えないみたいで。スマホに保存してあるその人の画像見ては、にこにこ笑って……本当、可愛いのよね」



響子ちゃんは、「私が言ってたのは、成美ちゃんには内緒にしてね」と言って台所を後にした。

響子ちゃんのその言葉に、私の胸はドキンと音を立ててキュウっと縮こまった。

あの時、成美が見せてくれたスマホの画面にいた翔太の顔が脳裏に浮かんだ。



「もしかして、成美の好きな人って……翔太?」



そう考えたらいてもたってもいられず、階段を駆け上り私の部屋の隣にある成美の部屋の扉をノックしようとしたが、直前でノックしようとしていた右手が固まり、それ以上動かすことができなかった。

私はノックしようとしていた右手をストンと落として、扉の向こうにいる成美に、「成美おやすみ」と声をかけた。

扉の向こうからは、力なく「うん」とだけ声が返ってきた。


もし成美の好きな人が本当に翔太だったら?

私はどうするべきなのだろう?

複雑な感情が、頭の中をぐるぐると駆け巡った。

答えを知るのが怖かった。