「また会えて嬉しい。小学校の時、ちゃんとお別れもしないままいなくなっちゃったからなあ」



「私もずっと気になってたよ。色々事情があったんだろうけど、学習発表会の前日にいなくなるなんて…」



「うん。実は、それずっと気になってたんだ。俺がいなくなった後発表会大丈夫だった?」



翔太は握っていた私の手を放して私の顔を覗き込むようにして、自分の頭をちょっとだけ傾けた。



「うん……まあ、なんとかなったよ」



私は、翔太に嘘をついた。

見栄を張った嘘なのか、自分が翔太の思い描いたような自分になれなかったことへの罪悪感かどちらかは分からないけれど、複雑な感情が私の心の中を占めた。



「俺さ、ナルとずっと太鼓叩きたいって思っててさ」



「そうなの?」



「そう。転校してからもずっとその時のことが気になっててさ……だから、ナル、もう一度一緒に太鼓叩きませんか?」



「え!?」



「これが、僕がナルにしか出来ないっていってたお願いだよ。ま、返事は後からでいいからさ。先にご飯食べちゃおう、冷めないうちに」



翔太はにっこり笑うと箸をとり、熱々のお味噌汁をゆっくりすすった。