今日は5時間授業だから、もう学校は終わり。
あたしは、部活にも入ってないから、いつものように帰る用意をした。
そして、彗のいる体育館へ向かった。
彗はね、心配症だから、あたしが一人で帰るのが不安って言って、毎日一緒に帰ってるんだ。
ほんとに、心配し過ぎだよ!
だって、あたしなんかを襲う不審者はいないよ。
まあ、そういうわけで、あたしは彗の部活が終わるまで待ってないといけないの。
だから、すごい暇だけど、バスケ部の人とも仲良くなれたしね。
何より、それで彗が安心してくれるなら、それでいい。
「あれ、七瀬先輩だ」
ん?
声のする方を見ると、そこにはあの変な子がいた…。
…げっ!!
バスケ部、希望者だったんだ…。
最悪…。
「俺のこと覚えてます?!吉良ですよ!吉良!」
「…覚えてるよ」
「何でここにいるんですか?!」
もう…うるさいな?!
あたし、吉良くん、苦手だ…。
「…知り合いを待ってるの…」
「へー、あ!!」
何ですか…今度は…。
「もしかして…彼氏ですか…?」
「はぁ?!そんなわけないでしょ?!彼氏なんて、いませんー」
「そーかそーか…よかったー」
何が良かったよ!!!!
人の不幸を喜びやがって…!!
あー、やっぱり苦手…。
「じゃーね、先輩!」
「…おっす」
「ぷっ!!…おっすって…やっぱ最高だわ、先輩」
…また一人で勝手に喋って…勝手にどっか行っちゃったし。
似てる…。
やっぱり、思い出しちゃう。
中学の時のこと。
吉良くんのこと、あたしが苦手な理由。
それは、自分勝手だって、分かってるのに。
って…また暗くなってる!
キモいよ…自分。
こんなのあたしらしくないじゃん。
よし、気持ち切り替えよう!!!
彗が終わるまで、いつもみたいに部室で待ってよーっと。
「しつれいしまーす」
ひとりごとを言いながら、バスケ部の部室に入ると、誰もいなかった。
暇だけど、しょーがないよね。
《ガラッ》
あたしが、ゆっくり椅子に座った瞬間、勢い良くドアがあいて騒がしい人たちが入ってきた。
「マジ、キツイわ〜」
「だよなー」
「でも楽しいな!」
「彗先輩イケメンすぎんだろ!」
「あれは、彼女いるな」
「絶対美人系!!!」
彗が先輩だって…!
面白いんだけど!!
ていうか、1年生か。
…なんか不審者って思われそう…。
隠れなきゃ!
でもあたしは、隠れる暇もなく、そのまま座ることしかできず…。
だから、もちろん…。
「うわっ!誰かいるんだけど?!」
…こうなりますよね。
最初に目があったのは、童顔っぽい子で、元気そーな印象を受けた。
これって、挨拶とかするべき?!
ていうか、ちゃんとここにいる理由説明したほうがいいのかな。
「ん…?あ、思い出した…!もしかして…」
「どーしたんだ?」
その子に呼ばれて、あと一人男子が来た。
「何で、女子?!」
「おい!あの有名な人だよ!この人!」
有名?!
あたしのこと?!
「あの…七瀬先輩ですよね?!」
「は、はい…」
なんか、かしこまってしまう。
何で、あたしの名前知ってるの?!
そんなに有名なの?!
「やば…生で見ると、すげー」
「それわかる!!めっちゃ可愛いよな…」
あの…状況が分かりません…。
なんか褒められてる?!
本当にあたしのことなのかな。
「あの…この後暇ですか?!」
「えと…ごめんなさい…」
「えー無理なんすか?!」
「えっ、と…」
堂々とした1年生の雰囲気に押されて、答えづらい…。
「てか、やっぱ高嶺の花っすね!!」
「…高嶺の…花?」
「知らないんすか?!先輩、大人っぽくて、落ち着いてて、学校一美人っていうので、有名なんすよ?」
「っ?!」
大人っぽい?!あたしが?!
やばい!!うれしい!!!
「俺達、先輩に一目惚れして!1回だけでいいから、デートしてください!!」
わ…あ…めっちゃ直球でアタックしてくるんですけど…。
断りたいけど…やっぱ断りにくい!!
押されるのに、弱いんです…。
「おねがいします!」
もう…しょうがないよね。
1回だけなら…いいか…。
「いいよ」
そう言おうとした、その時、だった。

