「先輩、俺のこと知りません?」


屋上にあたしは、不思議な男の子と二人きりでいる。

変な状況…。



「…知らない…興味ない……」

「…まじか、嘘じゃないみたいだし…本当に知らなかったんですね!俺、蓮を騙してるかと思って…」

「…れん?…誰それ…。…あ、でも何か、知ってる気がする…けど、やっぱ思い出せない…」


くそ…。

なんか思い出せそうな気はするのに思い出せないのって辛いよね…!?


あたしが頭を抱えてたら、その男の子が急に笑い出した。



「ははっ!!蓮の言ってる意味がわかりましたよー」

「は?」



もう!だから、その蓮って人が思い出せないんだよ!

この子、意外とSか?!




《ガチャ》


屋上の重いドアがゆっくりと開いて、またまた綺麗な顔が出てきた。

今日はイケメンによく会うな。

なんで?!

てか、また誰か分かんないし。



「おい!おせーぞ!礼央!何してんだよ」

「そこまで遅れてないっす、吉良さんが早いんじゃないっすか?」

「……そっか!」



この男の子の知り合い?


この吉良って子が1年だったはず。


じゃあ、中等部の子…?

やばい!あたしちょっと頭良くなったかも…!


この高校は、中等部と高等部が一緒の校舎にある。 

だから、交流がよくある。


あたしは、ここの中等部じゃなかったんだけどね。



「これが、蓮さんのお気に入り?」

「そーだ!かわいいだろ?」



「…ちょ、ちょっと待って?!」



二人の話が盛り上がる中、あたしは気にせず口を挟んだ。



「今…なんて言った?…」

「ああ、お気に入りってやつ?あれは…」


「ちがーう!!そんな事じゃない!」

「「…はあ?」」


何か、この子たちの失礼さ…誰かに似てるんだけど。

思い出せないけどさ。



「あたしのこと、これって言ったでしょ?!あたしは、七瀬莉子!これじゃないの!」

「「……」」


黙りこんでるけど…何?!

なんとかいいなさいよ!


さっきまで、あんなに元気だったのに。



「…あ、あんたバカだろ?!」

「やっば!面白すぎんだけど、いじめがいがあるー!」


…はああああ?!

何この子たち?!


頭おかしくなった?!



ほらね!!果歩!
イケメンでも、変人はいるんだよ。



「あのさ、先輩」

「……何よ」


「俺達と友達になってよ!」




…は?

…普通に嫌なんだけど。



今、そちらの二人は楽しかったのかもしれないけど、あたしはただ、ただ、苦痛の時間だったよ…。




「絶対やだ。あたしは先輩なんだから、敬語使うまで絶対、絶対ならないし!」



あたしはそう言って、屋上を後にした。




結局、5時限目サボっちゃったし…。

そんなに長い話なら、放課後して欲しかったんですけど…!!


昼休みも無駄になったしね。

弁償してほしいぐらい…。




とか強がってたけど、本当は気づいてたんだ。


あたしは、ある人を思い出してとても動揺していたことに。