「果歩〜!!」 


教室に入ると、大親友の姿を見つけて、飛びつく。

いつもなにかあると、果歩に飛びつくのです。


「あらあら〜今日はどうしたの〜?」


おばさん口調の果歩さん。

でも、それが安心するんだ〜。



「また、告られたの?」

「うん…まあ、そうなんだけど…」


「で、またまた振ったんでしょ?」

「…はい…」



話さなくても、全てがわかってるとか…。

うれしいけど、怖いです...!!



「はぁ…何であんたは〜…」

「果歩様〜」


「今回、すごいイケメンだったのに!!!どこがダメなのよ〜」



どこ…?

どこって言われてもさ…。


普通、好きな人と付き合うもんじゃないの?!

今の女子高校生はおかしいよ!!!



「でもさ…そろそろ彼氏作らないと、周りの男子に気の毒だよ…」
 
「…なんで?」

「あのね〜あんたが彼氏作らないから、自分にもチャンスがあると思って告白するのよ。つまり、気を持たせちゃうの!」



…な、なるほど…。

そーいうもんなのか…。


でも、好きな人いないし…。



「でも…今回はそれだけじゃないみたいね?」


「…へっ?!なんでわかったの?!」

「果歩様をなめちゃだめよーん」


さすがです…!!



「あのねあのね!聞いてよ〜」
 
「聞いてるから、早くして」
 
「は、はい…実は…」



あたしは、さっき会った変な奴のことを話した。


すると…イケメン好きの果歩様の目が輝いた。



「あ、あんた…それ…」

「ん?」

「蒼井蓮じゃないの!!!」



あおい…れん…?

…知らないです。


だって、男子に興味ないしー。

しかも、年下とか、論外だしー。



「生意気で、マイペースで、イケメンでしょ?!絶対そうよ!!」


あたしのことなんて、一切気にせず、果歩は自分の世界に入ってる。



「い〜な〜、莉子」

「どこが?!最悪なんだけど!!!」


「あのね〜蒼井くんは、人気がありすぎて、ファンクラブまであるのよ?!」



あんな奴にファンクラブ?!

ありえないんだけど…!!


 
「それに、普通は、話せただけでもラッキーなのよ!!!何にあんたは…」

「ちょっと待って!!話せてだけでラッキーって、どーいうこと?」

「…何も知らないのねー、本当に…」



果歩が深いため息をついた。



「蒼井くんは、クールっていうか…笑わないのよ!それに、話しかけても無視されるらしくて…」


何その理由…。

気になったあたしが馬鹿でした…。




「きゃあー!!!」


すると、教室の窓の外から騒がしい声が聞こえた。

そういうのにすぐ反応する果歩さん。


めんどくさがり、B型の私。

だって、興味ないしー。

誰かが喧嘩でもしてるんでしょ。



そう思いながら、窓に走って行ってすぐ下を見た果歩をながめる。


「ちょっと!!!莉子!!!見て!!!」

「やだ」



あたしは、即答…。
興味ないです!!



「早く!!!お菓子あげるから!!!」
「行く!!!」



お菓子という単語が聞こえた瞬間、ダッシュて窓に近づく。

おこちゃまです。

自分で、わかってますよー。

でも、お菓子大好きだもん。



「どーしたの?」

「ほら!!!莉子が言ってたのあの子でしょ?!」


騒ぎの真ん中にいるのは…あいつだ。


「そう…あいつ!見るからに、生意気な顔してるよ…!!」

「はー?どこがよ?!あの綺麗な顔の」



あー、もう何言っても無駄だ…。

果歩のイケメン好きには負けました…!


ていうか!!!
アイツを囲んでるのはみんな、女子。

つまり、あいつのことをカッコイイって思ってるんでしょ?!


それに、1年だけじゃなくて、2年も先輩もいるよ?!

みんなー、目を冷ましてよー。



「まあ、蒼井くんだけじゃないんだけどねー」

「え?」



何かを言いたそうにうずうずしてる、果歩。



「あのね!ほら!!!あの二人!!!!」


興奮した様子で、指差したのは、あいつの隣にいる男子。
 

「あのふたりも、結構なイケメンでね、人気なのよ!!!」



…ペラペラと話してるけど、その情報網は一体…。



「それにー!!!それだけじゃないの!!あの三人は、本当に仲良くて〜話してる様子が可愛いのよー」



アイツにも友達とかいるんだ…。

意外…。


その友達、どんな性格してるんだろう…。
尊敬するよ…。


やっと騒ぎが落ち着いて、あたしたちも席に戻る。



「…」

あたしは、黙って果歩の前に両手を出す。



「え?」

「…え?じゃないでしょー!!!お菓子!!!お菓子は?!」



もう待ちきれないよ?!

ずっと楽しみだったんだから。



「あ、あれ嘘」


はぁ?!嘘だったの?!


衝撃がすごくて、その場に倒れこむあたし。

じゃあ、あたしはなんのためにあんな奴の顔を2回も見ないといけないの?!



「ごめんごめん!!今度、ジュースおごるから」
 


果歩が慌ててる。

そんなに悲しむと思ってなかったんでしょー。



「クレープ…がいい」

「あー!わかったから!!」

「やったー!!」



素直に喜ぶあたしを、無駄に整った顔が覗きこんだ。



「ぶっ、何変なとこ座ってんだよ〜行くぞー」



手を引かれて、自分の席につく。


「で?なんでそんなにニヤニヤしてんだ?」

「えー、知りたい??知りたいのね?」

「なんだよ!気になるじゃねーか!」


「あのね〜果歩が、クレープ奢ってくれるんだって!!」

「…」



え、何その反応!!
嬉しくない?!



「そんな事かよ?!期待した俺が馬鹿でした」


…そんな事って…失礼な!!!!!



「…あたしにとっては、嬉しいことなの!!どーせ、彗には分からないよ!!!」

「分かんねーよ!わかりたくないしな!」

「もう知らない!!」