年下 生意気君の嘘かのになりました。

「あ、先輩」


んっ?!

だらだら、体育館の周りを歩いてたら、急に話しかけられた。


しかも、その相手は…。




「ぶっ…何、その顔」


生意気一年ボーイでした…。

やっと忘れてたのに…。


それに、さっき彗に無防備にするなって言われたばっかり！

気をつけよ…。



「どんな顔もしてないけど…」

「俺のこと、覚えてる？」

「…っ覚えてないです！」



あたしの話も聞かないで、自分のペースで話すよね…。

そういうところが、生意気なのよ!!!



「嘘つくの下手くそ」

「…うるさい」


「俺、結構有名なんだけど」

「知ってる…女の子たちが騒いでたし…」

「ふーん」


なんか嬉しそう…。

あたし、そんなに世間知らずじゃないし！



「先輩、また告られてた」

「え…見てたの…」


そうです…。

今日の朝も告白というものをされましたよ…。


しかも、後輩に…。



「たまたま、見ただけ」



そりゃ、そうでしょ？！

たまたまじゃなかったら、怖いし！！


あたしが聞いてるのは、見たのかってことなのに…。




「俺と付き合えば？」



また、こっちの話聞いてないし……って、うぇ?!



「は、はい?!」

「俺の彼女になればいいじゃん」

「…」



何それ…まさかこいつ…あたしのこと…。

いやいや、ありえないね。

ちょっと、今のは自意識過剰すぎた。


あたしの事好きとかありえないし！

でも…。



その提案は…結構いい!!

こいつが彼氏だったら、さすがに告白してくる人は少ないと思う！

だって、有名人?なんでしょ？


でも…こんな奴と付き合うなんて…あたしがこいつのファンクラブに何されるかわからないし!!!!


絶対、水かけられるよ…。


漫画で見たことあるもん！




「いいです…後輩には迷惑かけないから」




あたしは、頼りたい気持ちを必死に抑えて、背中を向ける。



「…何で？」

「何でって…あんたと付き合いたくないの！」



「…じゃあ、彼女のフリでいーじゃん」

「………それいい！」
　


あたしは、プライドなんて忘れて、満面の笑みで言った。

だって、あたしの初めての彼氏がこんな奴なんて、嫌だし！



「っ…急に笑わないで…」



突然、顔を隠して赤くなってる…。

…何照れてんの？

怖いんだけど…。、


でも、ちょっとかわいい。



「そーいえば…名前…知らない…」

「は？マジで。知ってるんじゃなかったのかよ」

「…しょーがないでしょ」


「俺は、蒼井蓮」



あ、聞いたことある…

前に、果歩が言ってた！



「あたしは…」

「七瀬莉子。」


「うそ…なんで知ってるの?!」

あたし、そんなに有名じゃないのに…。

「俺のこと、連でいいから」

「うん……わかった。蓮」

「…?!」
　

あたしが、名前を呼んだ途端、挙動不審になる蓮。　

どーしたの？


「呼び捨てとか、できなさそーなのに…」

「そう?別に呼び捨ての方が呼びやすいし」

「……じゃ、部活行く。じゃーね、センパイ」

「部活？」



何部なんだろ…なんか、汗かいてるし…。



「蓮ー、早く戻ってこいよー」



その時、駆け足でこちらに来る男子が見えた。



「あ、センパイ」

「お前、何、女子ナンパしてんだよ」



二度目のご対面…。

彗先輩！



「ごめんねー、このバカが…ん?」



彗と目があった。

その瞬間、彗の顔色が変わる。


「莉子?!まさかこいつと知り合い?!」

「え？…まあ、そうたけど」

「……そっか。どーいう関係？」


やっぱ、なんか怒ってるー。
やば…。



「えっと…彼氏…です」



その通りだしね…。

でも、蓮はニヤニヤしてるし…。
気持ちわるっ。



「……はは！冗談やめろよ!!」

「え？」


全然信じてくれないんだけど…。

まあ、恋愛に無関心なあたしに彼氏なんてね…。
しかも、年下!!


「センパイ、ホントなんだけど」

「おいおい、蓮の嘘なんて、バレバレだぞー」


蓮も信用されてないんじゃん!!
あたしと同じレベルね！



「てか、信じなくてもいーし」



すると、蓮があたしの腕を引っ張って、どんどん歩き始めた。


「ちょっと蓮?!」

「…黙って」


…後輩のくせに、かっこつけちゃってさ


「…ねえ。蓮って、もしかして、バスケ部？」


歩きながら、あたしは蓮に聞く。

彗と知り合いだし、バスケの服？っぽいし。
って、今更だけどね。


「そーだけど…何?」

「へー、じゃあ、彗の後輩か〜」
「…」


ん？
何か、怒った??

あなたまで、怒ってしまうのですか?!



「彗先輩と、どーいう関係なんだよ」

「…へ？彗と？」　


どーいうって言っても、別にそんなに深い関係じゃ…。

なんて言えばいいんだろ?!



「えっと…幼馴染？」

「……彗先輩と？」

「そーに決まってるじゃん！他に誰がいんのよ」


やっぱ、蓮はバカだな。
でも、ちょっと癒やされるかも。


「……じゃあ、許す」

「はい?!」


何か、許されたんですけど。

意味不明…。
ま、いいけどさ。



「バスケ部終わりそうだから、そろそろ行きなよ！」

「…帰り送る」

「あ、ううん、大丈夫！彗と帰るから」

「…は？」


……やば、また顔が曇り始めた…。

やっちゃった。



「…彗先輩を待ってたわけ？」

「う、うん…だって、家隣だし…」

「だめ。俺と帰る」


きゅん。　


…どうしよう……不覚にもドキッとした自分がいる…。

年下とかありえないはずなのに…。



「わかった？」

「うん…」

「よし」



やっぱり、上からなのは、変わらないのね。

ていうか、蓮と一緒に帰るとか、あたしの命が危ういことない?!


…不安しかないです。