その言葉だけが、何故か浩二の耳にはっきり聞こえた。
 黒板に文字を書くのをやめ、まるで何かから逃れたい一心で、独り言のように話しはじめた。
 「大友、遅いな。何しているんだ。学級委員、先生はちょっと大友の様子を見に行ってくるから、その間、自習していなさい。」
 突然の事に学級委員の生徒は驚き、目をパチクリしていた。
 「は、はい。」
 返事を聞き終わらないうちに、浩二は教室を飛び出していった。それはニコルから逃げ出したい、その一心からかもしれない。