―――見てる。
 中庭を挟んで反対側にある校舎からニコルが浩二の事を見ていた。陰鬱な瞳は遠くから見てもはっきりとわかった。その瞳に更に気分が悪くなった浩二は、また、保健室へと歩き始めた。しかし、いつまで経っても気分の悪さは続いたままだった。まさかと思いながらも、もう一度窓の外を見た。
 ―――見てる。
 どこまで、どこまで歩いても視線は浩二を追っていた。ただ、見られているだけ。しかし、ただ、それだけの行為なのに浩二は恐怖を覚えた。ニコルの視線から、逃れるために保健室まで走り続けた。