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翌日から、理紗は『You‐en』に姿を現さなくなった。
それは分かっていたことでもあるが、冬真は後悔した。
思わぬ展開になったのは、その三日後のことだった。
浩介が『You‐en』に顔を出したとき、その後ろに理紗が居ることに冬真は驚いた。
それは楓にとっても想定外のことだった。
「明日から、うちで働いてもらうことになったから。挨拶がてら、連れてきた。ここが忙しいときには、ピンチヒッターで入ってもらうこともあるからそのつもりで」
浩介が紹介すると、理紗はぎこちなく微笑んで頭を下げた。
この前の車の中での彼女とは雰囲気が違う。
髪を染めたからだ。
沙世子と同じダークブラウンの髪になった理紗は、さらに沙世子に似て見えた。
「どうして」
浩介が背を向けたとき、楓がその背中に呟いた。
「どうして? うちで働いてもらうことが、か?」
浩介が訊き返す。
「……」
楓は言葉を続けられない。
それほどに予想していない展開だった。
浩介は苦笑いをして、冬真に視線を向けて手招きをした。
冬真は浩介の傍に歩み寄り、浩介がその肩に腕を回す。
「ちょっと二人だけで話したいことがある」
そのままBスタジオに浩介と冬真は入っていった。

