ゆえん


     *

翌日から、理紗は『You‐en』に姿を現さなくなった。

それは分かっていたことでもあるが、冬真は後悔した。


思わぬ展開になったのは、その三日後のことだった。

浩介が『You‐en』に顔を出したとき、その後ろに理紗が居ることに冬真は驚いた。

それは楓にとっても想定外のことだった。


「明日から、うちで働いてもらうことになったから。挨拶がてら、連れてきた。ここが忙しいときには、ピンチヒッターで入ってもらうこともあるからそのつもりで」


浩介が紹介すると、理紗はぎこちなく微笑んで頭を下げた。

この前の車の中での彼女とは雰囲気が違う。

髪を染めたからだ。

沙世子と同じダークブラウンの髪になった理紗は、さらに沙世子に似て見えた。


「どうして」


浩介が背を向けたとき、楓がその背中に呟いた。


「どうして? うちで働いてもらうことが、か?」


 浩介が訊き返す。


「……」


楓は言葉を続けられない。

それほどに予想していない展開だった。

浩介は苦笑いをして、冬真に視線を向けて手招きをした。

冬真は浩介の傍に歩み寄り、浩介がその肩に腕を回す。


「ちょっと二人だけで話したいことがある」


そのままBスタジオに浩介と冬真は入っていった。